『鉄拳7』世界大会で優勝したのは彗星のごとく現れた無名のパキスタン人ゲーマー

無名のパキスタン格闘ゲーマーが世界大会で優勝

鉄拳国際大会優勝者アルスラン氏
『鉄拳7』世界大会優勝者アルスラン氏(中央)

今年2月、福岡で開催された「鉄拳7」の世界大会で彗星のごとく現れ、優勝をかっさらっていったプレイヤーがいた。それまで少なくとも日本の格闘ゲーム業界では無名だったアルスラン・アッシュ氏(23)、なんとパキスタンのプレイヤーだ。さらに業界を騒然とさせたのは優勝後に放った一言。「パキスタンには強い選手が、まだまだいる」。悟空が聞いたら、ワクワクしてすぐにでもパキスタンに行ってしまう事間違いなし、というマンガ展開である。

 

3D格闘ゲームの名作「鉄拳」シリーズ

『鉄拳7』画像

日本のゲームセンターからはじまり世界的な人気となった格闘ゲーム。1991年リリースされた「ストリートファイターⅡ」は、当時爆発的な人気を誇った格闘ゲーム。筆者もプレイしによくゲームセンターへ通ったものである。そのストリートファイターⅡがリリースされた年末には「餓狼伝説」、1993年の「サムライスピリッツ」などSNK系の2D格闘ゲームがゲームセンターで隆盛を誇る。そして、1993年には3Dの格闘ゲーム「バーチャファイター」が生まれ、格闘ゲームには2D、3D2つの流れができていく。格闘ゲームは様々なタイトル、名作が生まれていき、元々日本のローカルゲームセンターで開催されていた大会が、全国大会、さらには海外で世界大会が開催されるまでの広がりを見せていった。そんな格闘ゲームの名作のひとつが今回世界大会が開催され、バンダイナムコからリリースされている3D格闘ゲーム「鉄拳」シリーズだ。

 

ゲーム熱が高まっているパキスタン

パキスタン・ラホール市街並み南アジアに位置するパキスタン。1947年にイギリス領インド帝国から独立して以来、アフガニスタン紛争をはじめ、長い間、軍事独裁、テロ、政情不安が続いてきた。パキスタンは2億777万人、世界第6位の人口を誇るが、1日2ドル未満で暮らす貧困層は国民の半数を超えると推定されているという。ただし、パキスタンでは近年発電所が整備され、電力が安定、ゲームセンターや家庭でゲーム楽しむ環境ができてきたことによりゲーム熱が高まっているのだとか。さらに、パキスタンは世界第6位の人口のうち約6割を25歳以下の若者が占めているという超低齢化社会。ここが圧倒的なゲーム人口と層の厚さを形成しており、各地方の猛者が集まる全国大会は年10回ほど開催されているという。

 

虎の穴ともいうべきゲームセンターで腕を磨く

パキスタン・ラホール市ゲームセンター

さらに、ゲームセンターの役割が大きいという。パキスタンは電力の供給は安定したもののネットの通信速度はオンラインで格闘ゲームの対戦をできるほどではない。そこで、格闘ゲームの腕はゲームセンターで磨くのが一般的。騒がしいゲームセンターでギャラリーがいる中、様々なプレイヤーと対戦、場数を踏むことで勝負度胸なども自然に鍛えられていくのだとか。
現に「鉄拳7」世界大会で優勝したアルスラン・ラッシュ氏も1千万人が暮らすパキスタン東部ラホール市のゲームセンターで腕を磨いている。雑居ビルの一角にあるそのゲームセンターはさながら格闘ゲーマーたちの虎の穴のようだという。アルスラン氏をはじめ腕に自信アリの格闘ゲームの猛者どもが次々と集まってくる。アルスラン氏はこのゲームセンターで、3ゲーム先取のゲーム代は10ルピー(約8円)、負けた方が払うというルールで、対戦し腕を磨いたという。強くなるほど出費は減るという、弱肉強食の世界だ。日々彼らと切磋琢磨することにより、アルスラン氏は世界大会優勝にたどり着いたといえよう。

 

国内で実績を積んだアルスラン氏には2018年から中東のプロ集団「vSlash eSports」がスポンサーについており、国際大会の旅費などを出してくれているのだとか。アルスラン氏は今年8月再来日の話があったのだが、ビザの関係でかなわなかった。残念なことだ。しかし、パキスタンのいち都市の雑居ビルのゲームセンターからここまで来たアルスラン氏が、盛り上がりを見せるeスポーツの中で今後どこまで成り上がっていくことができるのか?注目していきたいところだ。

 

参考:withnews